佐々木勇吉調整師『エネルギー調整 研鑽ノート』
日常生活の中でエネルギーを使えるように


佐々木勇吉調整師がFacebookに書き続けているエネルギー調整法が、一冊の本としてまとまりました。基本的なエネルギーの使い方から、身体の調整のやり方、エネルギーの上達法まで盛りだくさんの内容となっています。佐々木調整師と本の編集を担当した会員の五十嵐さん、鈴木遙人会長を交えて、本の内容や読みどころについて伺いました。

◎自分で自分のために書いていた

――●佐々木さん初の著書となる『エネルギー調整 研鑽ノート』。判型も大きく(A4判でこの会員誌と同じサイズ)、250ページほどとかなりのボリュームになっています。

佐々木●Facebookにちょこちょこアップしていたんだけど、系統立ててとかまったく意識して書いてはなかった。普段からエネルギー調整をこんなふうにやっているんだよということや、いつもエネルギーに関して考えていることを、自分で自分のために書いていたようなもんで。それを、五十嵐さんがまとめてくれて一冊の本になりました。

五十嵐●もともとFacebookにエネルギー調整のことを書いているのは知っていたのですが、投稿の中に「本にしないかという話も来るけど、その気はない」と書かれていたので「そうなのか。一冊にまとめれば、調整のやり方の検索性も上がるし、便利なのにな」とずっと思っていました。

――●それが、こうやって本になったきっかけはなんだったのですか。

五十嵐●佐々木さんには、講習会でお話を伺うだけじゃなく、母の調整をしてもらったり、その調整のやり方を教えてもらったりしていました。また、私自身が体調を崩した時にも遠隔調整を依頼していたんです。だから、佐々木さんのエネルギー調整のすごさは身をもって体験していて、このエネルギー調整のやり方、エネルギーの使い方は、残さなければもったいないと思っていました。
それで、2021年年末の東京講習会に佐々木さんがお越しになっていたタイミングでお声がけしたんです。「佐々木さん、Facebookは本にする気はないんですか?」と。そうしたら「んん、やってよ」って。「え~! やっていいんですか?」と、そこからスタートしました。

――●佐々木さんは自分のために書いていたとおっしゃいましたが、『研鑽ノート』を始めたきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

佐々木●書き始めたのは2020年の誕生日直後くらいから。その頃、調整していて「なんか昨日と同じことやってんな」と面白くなく思うことがあって。こういった症例に、このような調整をしたと記録していこうと思ったのが最初。
エネルギー調整を数多くやっていると、これはこうして、こうやってと一つひとつ細かく覚えているわけじゃない。ただ、同じような症例を調整しているうちに「ああ、前もやったなあ」と思い出す。こういう考え方でやって、こうやったなあと。すると、いろいろと気付くことがあるんですよ。
Facebookの読者はね、PHの会員さんだけじゃないです。直接コメントを載せる人は少ないんだけど、メールは多い。3パターンあって、一つはPH会の調整師さん、調整師ではないんだけどエネルギーに興味のある人、それとPH会とはまったく関係のない整体師やお医者さん。

五十嵐●お医者さんとかも、結構いらっしゃるんですか。

佐々木●若いお医者さんが多いね。頭が柔軟なんだろうね。医学に縛られてないような感じ。ケガをした子どもが来た時に「ボクは外科は専門ではないのでちょっと…」というタイプと、何があっても引き受ける、引き受けたいタイプ。後者のタイプのお医者さんからメールがよく来る。
実は私のクライアントにもお医者さんが多くて、同級生の医者は、テニスをやっていて膝を痛めたからって来る。「お前医者だろう」って言っても「いや頼む」と。

五十嵐●医者も、エネルギーを自ら体験すればわかる。

佐々木●そうだね。とは言うものの、医学には歴史があるし、エネルギーの世界が現代医学を否定するものではない。それは勘違いしてはいけない。
エネルギーの世界は、ともするとあやしい世界に行きがちなところもあるので、十分に注意しなければならないと思うわけです。だから、いつも言っているのは「ケガをしたら、病気になったら、まず病院に行け」と。そのあたりの線引きというか、そういった気を付けなければいけないことも、この本には書いているので、これはぜひ読んでほしいです。

五十嵐●本の構成は、前半に、佐々木さん流【基本調整】のやり方について。他に、よく使われるエネルギーの技のこと(「エネストロー」や「ゴムパッチン」「小指のおもいで」など)や、筋肉を弛めるとはどういうことかとか、ストレスを抜くといったこと、内臓の調整、美容の調整まで。
後半は、部位別や症例別のエネルギー調整の具体例となっています。

――●まとめるにあたって気を付けた点はありますか?

五十嵐●ともすれば「こんなエネルギー調整は佐々木さんだからできる」と思われがちですが、そうならないように。

佐々木●エネルギー調整は魔法じゃなくて、ちゃんと理論があるんだよと常々言っていてね。いつもこの【基本調整】をしっかりやるだけで、たいがいの症状の八割方はなんとかなると言っているんです。後は気になる所をやればいいと。【基本調整】だけで、ほとんど済んじゃうというのが伝わればいいんだけど。

五十嵐●【基本調整】だけで結構なページ数になっています。

佐々木●症例のそれぞれに、どこにはどこというポイントはあるんだけど、【基本調整】をやれば、そのなかにポイントが含まれているんですよ。
筋膜ラインをいじっていると、どこか突然ギュッと引っかかるような感覚があったとすると、たぶんそこがその症例のポイントなんだよね。症例ごとのポイントはそれぞれなんだけど、いちいち覚えてない。ただ、エネルギー調整やっているうちに思い出してくる。【基本調整】をやっていると、そこに気付くというか。

――●講習会などでいろいろ調整のことを伺ってもイメージがわかずに、なかなか難しく感じていました。それがこの本はイラストが詳しく入っていたり、一覧でまとまっていたりするのでわかりやすくて「これなら自分でもできるかも」と思いました。

五十嵐●筋肉のイラストは、それぞれの起始停止まで意識して描いてもらっています。なんとなくこのあたりの筋肉なんだなと思うだけでもいいし、この骨に付いているんだと思ってもらってもいい。エネルギーが働きやすいように、細部にもこだわりました。

――●後半の部位や症例別の所は、検索性がいいのも使いやすいです。

佐々木●症例や症状別の所は、これまでやったクライアントの例を中心に、一般的なことを書いています。

五十嵐●だから、自分で腰が痛いからと、腰の調整のことが書かれている所だけを読んでやっても改善するということではないんですよね。

佐々木●症例や症状を探して、それだけをするのではなくて、まず【基本調整】をやって、何かおかしいなと思う所に気付くことが大切なんです。
エネルギーの面白いところは、「膝が痛い」と言って来たクライアントの【基本調整】をしていると、何か引っかかる所があるなと感じて、例えばそれが肩の辺りなら、肩の周辺を意識してやるわけです。それで、調整が終わって「膝はどう?」って聞くと「あれっ? 肩が痛くねえ!」って。本人が自覚している所と痛んでいる所が違っていたり、気が付いていなかったりすることがよくある。
それでも、エネルギーは働いてくれるんです。エネルギーにはごまかしが効かない感じがする。これは、特別な能力じゃなくて、誰でも数をこなせば、そういう感覚は得られるものだと思う。
ただ、【基本調整】をやりながらも、やっぱり昨日と同じことをやっているんじゃ面白くないなと。何かないかなといつも探っていて、ちょっと別のことをやってみたりする…。100回やっても98回は空振りなんだけど。でもね、そういうのが楽しいんですよ。

五十嵐●この本にはエネルギーの使い方や調整例がたくさん載っているので、エネルギー研鑽の参考になるかと思います。ところで、佐々木さんとしてはこの本をどのように読んでほしいですか。

佐々木●調整師を目指す人も、目指していない人も、エネルギーに興味があれば、こんなこともあるんだ、あんなこともあるんだと、気付きがたくさんあると思う。何十万円のセミナーを受けて、それを無駄にするのも、1億円の価値に高めるのもその人次第。一を聞いて百を知る人もいれば、百習って一つも残らない人もいる。
本を読んで、何かを得ようとか、あまり考えなくていい。本に書いてあるたった一行でも印象に残ればいいし、それがその人にとって価値あることであればなおいい。この本で何を訴えているのかをわかろうとしても、行間を読むのは難しい。大切なことは、文章にならない所に含まれていることが多いし、こちらから特別に何かを訴えたいというのはないんです。あるとしたら一つ「エネルギーはおもしれーぞ!」くらい。
本に書いてあることをエネルギー調整のマニュアルとして捉えるのもいいんだけど、例えば「パンをもらっても、その時にしか食べられない。でもパンの作り方を覚えれば、いつでも好きな時にパンが食べられるようになる」。
どういうことかというと、書いてあることだけをただ真似るだけではその場だけ。真似るにしても自分であれこれ考えて自分のものにすれば、いつでもパンを作って食べられるようになる。自分でできるようになってほしいということです。

◎研鑽ノートを使った講座

――●『エネルギー調整 研鑽ノート』を使って、佐々木さんの講座を開くことになったそうですね。

鈴木●たくさんの佐々木オリジナルの調整例や詳細な【基本調整】のことがまとめられているので、この本をもとにして、佐々木さんご自身の言葉で解説されたり、実際に調整のやり方を見せてくれるような講座を開催することにしました。

佐々木●ありがとうございます。参加条件はこの本を読んでいること。読めば当然、疑問とかわからない所とか出てくるじゃないですか。だから、こちらから一方的に、こうしてあーしてとやるのではなく「読んだけど、『エネルギー体をつかむ』ってどうすればいいの?」と、我々が普通にやっていることでも、わからないことが聞けて、それに応える場にしたい。個人個人の疑問に正面から応えていくような講座にしたいと思っています。
例えば「マイナスを抜く」。今では普通にやっているけど、私だって最初の頃は「何それ?」って感じだった。当たり前じゃないってことを思い出すには、初心者の素朴な疑問がいちばん。きっとそれが、私自身の研鑽にもなると思う。きちんと説明できるように、こちらも研鑽しますよ。

鈴木●佐々木さんからの要望で、少しでも多くの人に調整法に興味をもってもらいたいということから、今回の参加資格は「エルビードプライム伝授」を受けていることにしました。「エネルギーの感覚がないから」「講座に参加してもわからないかも」と思っている人でも大丈夫。エネルギーが後押ししてくれますから。きっと、何らかの発見があると思います。ただいつも言っていることですが、こういった講座を受けて、生かすも殺すも、皆さんのその後の研鑽次第ということですね。

佐々木●今度の講座では、参加者とのQ&Aと【基本調整】を具体的にやるようにしようと思っています。筋肉を弛めるとか、筋膜ラインのやり方とか、本だけでは伝えきれないことを、その場でやるようになると思う。
エネルギー調整のやり方で、花粉症の調整として、頸椎五番を左手で持って固定し、右手で頸椎四番を持って回す…と書いてあるのだけど、実際にやろうとすると多くの人は、右手も左手も回してしまうんですね。頸椎五番は固定して動かさないと書いてあっても、実際にはなかなかできない。それを、講座の中でやるとしたら、固定している左手の感じとか、右手の動かし方がよくわかる。もしかすると、エネルギーが動くのを感じられるかもしれない。
筋膜ラインの調整では、身体くるくるラインにはガムテープを貼り付けたイメージで、それを剥がすような感覚…とか。そういったことを実際にやってみようと思っている。

五十嵐●そういったことは、本で読むよりも、実際に目で見てやってみるのがいちばんですね。

佐々木●講座のいいところは、エネルギー調整を実際に体験できること。わからないことがあったら、その場で解消できるしね。直接見て確認できれば「こんなことなのか!」という発見がたくさんあると思います。
そういったことがヒントになって、身体全体を調整しやすくなったり、「筋肉を櫛ですくように」ということの感覚がわかりやすくなったりする。

五十嵐●目の前でいちばん見たいのは、「ストレスを抜く」かもしれません。

佐々木●ストレス抜きは、人によってもさまざまあるからね。よくメールで「どうやってやるのですか?」と質問が来る。文章で返すんだけど、文字で書くのは限界があるし、感覚は伝えきれないと感じてしまう。
例えば、神原調整師協会長のやり方は、頭から手を突っ込んで、ストレスをつかみに行くというよりも、綿あめのように手にからめて取る。
これを文章で書いても、人それぞれに感覚が違う。綿あめのイメージだって人によって異なる。「綿あめのように」と書くしかないんだけど、マニュアル化されたように感じてしまい、それでは完全に理解したことにはならないんだよね。
ただ、それはそれでよくて、そこから自分なりの研鑽をしていけばいいということなんだけどね。
そういう意味では、講座で実際にその場でエネルギー調整を体験できるというのは、すごく貴重なことで、役に立つと思う。

鈴木●今回の講座では、この『エネルギー調整 研鑽ノート』がテキストになります。前回はテキストがなかったから参加した皆さんがメモを取ることに注力していたのが気になりました。
今回は、テキストがある分、メモを取るよりも、話や実習に集中できると思います。

佐々木●メモを必死に取ろうとしていると、メモだけで終わっちゃう。それで次の話に移ってしまうと、もう1回同じことを聞いてきたりする。
だから今回は、メモを取るなら、私が話したことじゃなく、その場で自分が疑問に思ったことを書いて、それを質問してほしい。そのためにも、1回本を読み込んで、その上で疑問に思ったことや、わからなかったことを、その場でやり取りしながら進めていきたいですね。

鈴木●佐々木さんの講座を受けて、もっとエネルギー調整のレベルを上げたいとか、もっと結果を出したいと思ったら、ぜひ「TDE式身体バランス調整セミナー」を受けてもらえればと思います。佐々木さんのエネルギー調整の土台となっているセミナーですし、さまざまなアクティブオートロードもあって、筋肉や骨格に、よりTDEを響かせることができるようになります。
佐々木さんは、この『エネルギー調整 研鑽ノート』が「家庭の医学」のように、一家に一冊置いてもらえるようになればいいなとおっしゃっていました。私もまさにその通りだと思います。たとえ調整のプロになるつもりはなくても、日常生活の中でエネルギーを使えるようになってほしいなと思います。
この本を通じて、一人でも多くの方がTDE式の調整に興味を持っていただけたらうれしく思います。今日はありがとうございました。

(PH会員誌11月号より抜粋)